難聴(なんちょう)とは、聴力が正常に比べて低下している状態。WHOの定義によると、聴力が26dB以上低下(26dBHL)すると「難聴」と考え、低下の度合いによって、軽度難聴(Slight; 26-40dBHL)、中等度難聴(Moderate; 41-60dBHL)、高度難聴(Severe; 61-80dBHL)、重度難聴(Profound; 81dBHL以上)と呼ばれている。WHOでは、1m先にいる相手がすこし音量を上げないと言葉が聞こえる程度にならないくらいに難聴が進行すると(中等度難聴)、補聴器の装用を推奨している。叫ばないと聞こえないくらい(高度難聴)では、補聴器は必須であり、そのほか読唇術(口の動きを見て、相手の話している言葉を把握すること)を習得する必要があるとしている。
難聴の度合いに応じて、補聴器、人工内耳などで装置を使って音を大きくすることで補聴することができるが、現実的には、「音は感じとれるようになるが、言葉としての認識はできない」などの問題が残ることも多い。外耳、中耳の障害による難聴を伝音性難聴とよび、内耳、神経、脳幹の障害による難聴を感音性難聴と呼ぶ。ほかにも、騒音性、遺伝性、老人性など複数の分類され方がある。
職業上、騒音にさらされやすい環境にある場合は、耳栓など耳保護具により、耳を守ることを検討しましょう!
難聴の主な症状は、下記のとおりである。
①音が聞きとりにくくなる。
高い音は、低い音に比べ、音量が小さいことが多く、また、90%の大人の難聴患者、75%の幼児の難聴患者が500Hzから4kHzの音の高さで聞き取りが悪くなる。そのため、音は充分大きく聞こえているけど、何を言っているかわからないということがよく起きる。
②ダイナミック・レンジが狭まる。
音が感じ取れる小さく感じられる音量から、不快と感じられるようになる大きな音量までの音の大きさの幅が正常な耳にくらべ狭くなり、適度な音量で音を聞き取ることが難しくなる(例、小さい音は小さすぎて聞こえないが、大きな音は耳が痛くなるほど大きい)。音の振動を電気信号に変換し、神経に伝える蝸牛にある外有毛細胞の小さな音を増幅させるというボリューム調整の機能が上手く働くなることによる。
③音の高さに対する感度(分解能)が悪くなる。
聞き取っている音の高さに対して感度調整ができるはずである外有毛細胞がうまく機能しないことで、それぞれの音の高さ(特に類似する音の高さの音に対して;音声と雑音が同時に聞こえた時でも)を分別することが難しくなり、音の高さ正確に判断できなくなる。これにより、言葉の認識も難しくなる。
④時間的分解能が悪くなる。
時間的分解能とは次のようなことである。耳が正常に機能している場合でも、音が連続して起こる際、先行する、または、あとに続く大きな音が小さな音を聞こえにくく、音がかぶさって聞こえなくなってしまうことがあるが、感音性難聴になると、この音がかぶさる度合いが激しくなることがある。これにより、言葉の聞き取りに影響がある。
参考文献
Dillon, H. (2001) Hearing Aids. Thieme, New York.
Moore,B.C.J. (2007) Cochlear hearing loss, Physiological, Psychological and Technical Issues, 2nd eds. Wiley, Southern Gate.
日本音響学会. (1988) 音響用語辞典(初版). コロナ社, 東京.